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2.5 保存力場

強力な掃除機があるとして、球状のノズルをつけた吸い込み口に吸い込まれる空気の流れを想像してみてください。吸い込む力は、吸い込み口に近い程大きく、遠いほど小さくなっています。

次に、この球状のノズルを地球であると想像してみてください。球状のノズルの回りの空気の流れは、地球の重力の流れとほとんどまったく同じであることが理解できるでしょう。結果として、数式的な表現も流体に関する複雑な運動を無視すれば、ほとんど同じ形式になります。

地球上において、より高いところにある物体は、低いところにある物体より、多くのエネルギーを持っていると解釈することがあります。例えば、同じ重さの石を落とすなら、より高いところから落とす方が、地上にある物体との衝突の衝撃力を高めることができます。このような場の位置によって変わるエネルギーの表現は位置エネルギーとよばれています。

地球などの重力の場は、位置エネルギーの大きさで、その場の状態を表現することができます。まったく同じように、風の場でも位置エネルギーを考えることができます。風上にある物体は、風下にある物体より、多くの風の場の位置エネルギーを持っていることになります。

場の中で、図2.5のように放射的な形をしているものは保存力場とよばれています。回転していない惑星のつくる重力場は保存力場の一つです。惑星などの表面で、重力の場が保存力場かそうでないか確かめるには、自転車の車輪のような自由に回転できる質量を持った円盤の方向をさまざまに変化させて、ひとりでに回りだすならば、その場は保存力場ではなく、回りださないならば、保存力場になります。

同じように風の場では、図2.6のような受風板が回りだすか、回りださないかで、その風の場が保存力場かそうでないか確かめることができます。

保存力場のことを、その場からエネルギーを取り出すことができない場であると思っている人がたいへん多いようですが、このような考えは正しくありません。

風の保存力場からは、簡単にエネルギーを取り出すことができます。風車を設置すればよいだけだからです。風車が回転するのは、局所的にその場が保存力場ではなくなったからだと主張する人がいるかもしれませんが、保存力場を非保存力場に変換し、エネルギーを取り出したということは、結局、保存力場からエネルギーを取り出したということです。

だから、昔の科学者が地球の保存力場から、エネルギーを取り出せるのでないかと考えたことは、現代人が思っているほどバカげたことではありません。さて、地球の保存力場からエネルギーを取り出す方法はあるのでしょうか。

実は、この方法は、既に説明されています。風の場では風車を用いることによって、保存力場を非保存力場に変換できました。重力の場でも、保存力場を非保存力場に変換する方法を考えればよいのです。

非保存力場であることを確かめるには、円盤のようなものが回転するかどうか確かめればよいと述べましたが、この形は別に円盤状である必要はありません。どのような物体でも、回転運動をすればよいのです。例えば、図2.7のような物体を地球重力場内に設置することによって回転運動をさせること可能です。

この球状の物体の中身は何が入っているのでしょうか。あえて言う必要もないでしょうが、その中には回転しているジャイロが入っているだけで、「1.3 コマの運動」の図1.1に球状のカバーをつけたものが、図2.7になります。

この物体の周りの空間は、非保存力場となっています。この物体を全体として回転させるエネルギーは、重力の場から得られているものだと考えられます。よく知られているように中のジャイロの回転速度を低下させる要素は、軸受けなどとの抵抗によるもので、抵抗がなければ、ジャイロは永遠に回転し続けるものです。大きなジャイロである地球や土星はほとんど減衰することなく回り続けていることは衆知のことです。したがって、ジャイロの回転抵抗がなければ、この物体は台座に回転トルクを発生させ、そのトルクを利用しても、トルクは永遠に出力され続けることになります。この簡単な構造は、これ自体、永久機関となっていることを示しています。

図2.7の物体を無重力空間に設置しても回転を始めることはありません。無重力空間には、上も下もありません。もし、無重力空間で回転するとすれば、いったいどの方向へ回転すればよいのでしょうか。ジャイロが倒れないのは重力場と相互作用するのではなく、それは遠心力によるものだと言う人もいます。それならば、どうしてジャイロはいつも重力場と明らかな相関性をもって向きを変えようとするのでしょうか。ジャイロが無重力空間で向きを変えないということを簡単に確かめる実験があります。物体を自由落下させると、その物体は局所的に無重力状態になることが知られています。回転しているジャイロを軸を地球重力の方向と斜めにして、落下させても、その軸の角度は変わることはありません。

巨大なジャイロを船舶に設置すると、周りの風や波の影響による揺れを低減させることができることはよく知られています。この理由は、現代でも不思議なことと見なされているものの一つです。風や波によって、船舶にエネルギーが加えられると、それに対抗して船舶を安定させるためには、新たなエネルギーが必要になります。これは綱引きをしている場合、相手に負けないためには、相手と同等以上の力を出さねばならないということと同じことです。そこに力があるとき、そこにエネルギーもあるというのが、われわれの結論でした。船舶が安定するためには、エネルギーが必要になるのです。そのエネルギー源は、どこから得たのかということに、もう、疑問はないと思います。

重力というのは、その他の力とは、力の伝達方法が基本的に異なっています。次には、物体を加速させる方法について考えることにしましょう。


2.6 物体を加速させる方法

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Updated 29/Mar/1997 redsky@graveng.jp